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6月18日…自選エッセイ集より【20】
 私は新宿で生まれてから、渋谷に住み着く間に、神奈川県の稲田堤という多摩川の畔に居たことがある。幼稚園と小学一、二年までの数年間なのだが、その頃の記憶が近頃は妙に蘇る。
 長らく、他人の人生を眺めているような気持ちになる期間だった。旅先へ向かう家族全員が乗るルノーが、二台の大型トラックに挟まれるという、第一回目の大事故で頭を強く打ったからなのか、あるいは、子供心には余る体験を、記憶から抹殺しようとしたときに、その周りの思い出も巻き添えになったからだと思う。
 その人生の中でポッカリ空いた隙間が、一年前、親父を亡くしたことをきっかけに徐々に埋まっていくように感じている。 自分の心の内など、すっかりお見通しのつもりでいたから、これは意外だった。真にトラウマというのは厄介だ。それ以上の何かが起こらない限り、それがあったことさえ気付きもしない。 ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:16 AM | comments (3) | trackback (0) |
ヒラスズキありのまま…自選エッセイ集より【19】
  四年前(95年)、魚が好きで堪らないといった感じの海洋生物の研究者と会う機会があった。彼に、あるヒラスズキの事を話したら、笑われたことがある。
 話が佳境に入り、私はつい、同魚種でもたまに性質どころか性格が異なるものがいる、と断言してしまったからだ。
 魚の研究者にとって、スズキはスズキであり、ヒラメはヒラメだ。分類学上、頑固なヒラスズキⅡとか、ほとんどマルのヒラスズキⅢとかはいない。
 当日は研究所で飼っているスズキ、鯛、ヒラメをはじめ、実に多くの魚の生態や餌付けを見せてくれた。どの魚も飼い慣らされたコイのように人に寄ってくる。カレイなどは愛嬌さえ振りまきそうだ。まさしく研究者の言うとおりの魚たちだった。
 私が知るヒラスズキはこんな食い方をしない、と言ったらまた笑われた。それでも研究者はやはり同好の士、私の話す魚に強い興味を持ってくれた。そこで、後日、「スペシャルヒラ」を持ち込むことを約束した。 ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:11 AM | comments (2) | trackback (0) |
異国の釣り師と……自選エッセイ集より【18】‐S
 今まで、国内の釣行記は幾つも専門誌などに発表してきたが、海外での経験を話したことはなかった。(96年時点で) 理由は様々だが、主に私の志向が、リゾートのガイド付きの釣りとは離れているせいだろう。
 そこで、今回は、大物の話はともかくとして、印象深かったアメリカの釣り人達との交遊のひとつを書こう。  ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:22 AM | comments (0) | trackback (0) |
ギャップ4…自選エッセイ集より【17】
   ◇ギャップ一
 大阪の夜、編集長との泥酔中の約束から始まった、このエッセイだが、本来の私は文章を他人に読まれることが、大の苦手なのだ。
 高校の時、滅多に提出したことがない作文を、突然、ことわりもなくクラスメートの前で、先生に朗読された。いつも最後列に陣取って、授業非参加型のけっして優良とはいえない生徒に視線が集まった。私は、これ以上ないぐらい赤面し、全員が、その内容と私とのギャップに戸惑ったように見えた。
 なにせ、チェーホフの愛について書いてあったのだから。さらに私にとっては、それは感想文の形を借りて、クラスの中のたった一人を相手に、うち明けられない想いを綴ったようなものだったのだ。
 当日、その肝心な相手は、病気で欠席していたことだけが救いであった。
 とにかく、それ以降、私は文章を書かなくなった。年賀状も、母親への返事さえも。もちろん、課題の作文も白紙で提出し続けたが、何故か叱責されることもなく、無事卒業できた。少しはデリカシーのわかる先生だったのだろう。  ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:42 AM | comments (0) | trackback (0) |
足跡のない砂浜で…自選エッセイ集より【16】‐S
 砂浜のルアーフィッシングでは、ポイントが絞れないとき、しばしば浜の続く限り歩いてしまう。
 ウエイダー姿で何キロも歩いていると、先行者の真新しい足跡を幾すじか見つけた。目で辿ると霞むような遠くに人影があった。
 この足を引きずって、右へ左へフラフラと、立ち止まっては溜息をして、流木があれば腰掛けているのは、たぶんKさんだろう。そのうち、歩幅が乱れて、波打ち際のエグレの前で、後退りしてヒラメか何かをズリ上げた痕跡がある。
 久々の大物かもしれない。足跡を辿って数キロ行くと、やはり、Kさんだった。大きなヒラメを掲げて笑っている。
 月に二十日も通い込んでいると、その足跡さえ見れば誰が居るのか、そして釣れ具合まで一目瞭然だ。私のはと言えば、やたらと一服が多いのが特徴だろう。  ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:08 AM | comments (0) | trackback (0) |
反マニュアル…自選エッセイ集より【15】
 先月のNZ遠征では、船に十日も乗りっぱなしであったが、荒天に阻まれて三日しか満足な釣りができなかった。
 本命ポイントは外したものの、そこはさすがにNZ、初めて行ったミドルセックスバンク(スリーキングスの先)というところでは、二十キロを超えるヒラマサのスクールに会うことが出来た。
 この遠征は調査目的のため、スタッフは多いものの、メインの釣師は私だけだ。
恵まれているようだが、代わりがいないため、少々のアクシデントは無視して続行する覚悟がいる。今年は、移動中、小さな町で奥歯を一本抜いた。
 そのかわり、有り余る時間と豊かな海のおかげで、釣技や道具を色々と試すことができる。リーダーの太さ長さ、ドラグのこと、フックのこと、ルアーのことなど、より知りたいことは幾つもある。 ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:16 AM | comments (0) | trackback (0) |
衛星から…自選エッセイ集より【14】
 我が愛車が、また海に落ちている。と言ってもナビゲーション画面の中でのことだ。個人向け市販第何号とかの、古い機種なので今のナビにあるような補正機能が無く、百メートルぐらいは走行中の道からズレてしまう。
 東京湾横断道を走ると、当時は無かった道のせいか、自車位置がアタフタと機械らしからぬ動きを見せて愉快だ。都会ではビル群に衛星電波が遮られて用をなさない。
 何故、まだこんなナビを使っているかというと、完璧な盗難防止機能を備えているからだ。ある駐車場でナビなどの盗難事件があったときも、私のオープンカーだけは無事だった。流石に手慣れた泥棒の目は確かだ。
 また、こんなナビでもビル群の無い、見知らぬ土地であれば迷うことはない。その代わり、ナビの無い時代にはあった、旅中の思わぬめぐり逢いや、ハプニングも無くなった。たいてい、目的地に最短で着く。  ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 12:33 AM | comments (0) | trackback (0) |
ルアーとギャング…自選エッセイ集より【13】
 今年で十四回目のシーバスパーティを終えて帰って来たところだ。前夜は相変わらず、ほとんど寝ずに酒を飲んでいた。帰宅途中、睡魔に襲われ、堪らず車中で休んだら、顔にハンドルの跡が付いて困った。私の車はリクライニング出来ないのだ。
 それにしてもプレ大会を入れると十五年目になり、当然、初期からの参加者も歳を取った。三十代の私は、まだ毛髪も健在だったし、徹夜が続いてもハンドルの上で寝るようなことは無かった。
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| エッセイ2 | 12:27 AM | comments (0) | trackback (0) |
9キロに一匹の頃は…自選エッセイ集より【12】‐S
 かつて、その容易さと数釣りの魅力で浮気していた内湾のスズキ釣りから、再び、外洋スズキ主体へと志向を改めた頃。 まだ、K-TENも無く、逆風下の釣果倍増の方法も知らず、情報も乏しく、連日のアブレの中、試行錯誤に明け暮れていた。
 この年の手帳の十二月の終わりに“9キロに一匹”とある。書き記したときに、思わず天井を仰いだことを憶えている。 これは釣行日にルアーを投げていた時間で、おおよその投入回数を求めて、ワンキャスト三、四十メートル巻くので、それを掛けて、いったい、ルアーをどれだけ泳がせれば一匹釣れるのかを割り出したところ、一年を平均したら、9キロに一匹になったということである。
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| エッセイ2 | 08:08 AM | comments (0) | trackback (0) |
抽象画とルアーマン…自選エッセイ集より【11】
  我が家のトイレの壁には、数枚の地図と細長い地球の歴史年表が貼ってある。
 これを見て毎回(何が?)思うことがある。
 たしか、日本の広さを本当に理解したのは、みずからオートバイに乗って一気に北海道まで駆け抜けたときだった。それまで使っていた列車や飛行機のときとは、距離の感覚に大きく違いがあった。
 また、初めて通る道なら遠いと感じても、繰り返し通って慣れると近くなってゆく。測量上の地形は変わるはずもないが、我々の頭の中の地図はえらく歪んでいるようだ。
 釣行の度に助手席で熟睡できる相棒は、どんなに遠い海でも三十分でいけるものだと思っているフシがある。  ( > > > 続きを読む)
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| エッセイ2 | 11:45 AM | comments (0) | trackback (0) |
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